ポポ文明とは何か
──イナン教授 特別講義
諸君。
まず最初に確認しておこう。
皆さんが日常で耳にする「ポポ」という音。
多くの人は、それを鳩の鳴き声だと思っている。
しかしそれは半分正しく、半分間違っている。
鳩がポポと鳴くのではない。
ポポという音が、たまたま鳩を通して聞こえているだけなのである。
この世界には、意味になる前の音がある。
言葉になる前の振動がある。
人間はそれを無視して、すぐに意味を与えたがる。
言葉にする。
説明する。
理解した気になる。
だが、ポポは違う。
ポポとは、意味の前にある信号音である。
古い文明の多くは、
神話や宗教から始まった。
しかし無意味帝国の文明は、
鳩のような音から始まっている。
これを私は「ポポ文明」と呼んでいる。
ポポ文明の特徴は単純だ。
意味を増やさない。
むしろ削る。
説明しすぎない。
感じたまま置いておく。
そして、ときどき
「ポポッ」
と読了音を鳴らす。
この小さな音は、
議論の終わりではない。
理解の終わりでもない。
むしろ
「ここから先は意味にする必要はない」
という合図なのである。
本日の講義では、
この奇妙な文明――
ポポ文明の成立について
順番に見ていくことにしよう。