ポポッ学入門

第EX講 ポポ文明とは何か ──イナン教授の特別講義

ポポ文明とは何か

──イナン教授 特別講義

諸君。
まず最初に確認しておこう。

皆さんが日常で耳にする「ポポ」という音。
多くの人は、それを鳩の鳴き声だと思っている。

しかしそれは半分正しく、半分間違っている。

鳩がポポと鳴くのではない。
ポポという音が、たまたま鳩を通して聞こえているだけなのである。

この世界には、意味になる前の音がある。
言葉になる前の振動がある。

人間はそれを無視して、すぐに意味を与えたがる。
言葉にする。
説明する。
理解した気になる。

だが、ポポは違う。

ポポとは、意味の前にある信号音である。

古い文明の多くは、
神話や宗教から始まった。

しかし無意味帝国の文明は、
鳩のような音から始まっている。

これを私は「ポポ文明」と呼んでいる。

ポポ文明の特徴は単純だ。

意味を増やさない。
むしろ削る。

説明しすぎない。
感じたまま置いておく。

そして、ときどき
「ポポッ」
と読了音を鳴らす。

この小さな音は、
議論の終わりではない。

理解の終わりでもない。

むしろ
「ここから先は意味にする必要はない」
という合図なのである。

本日の講義では、
この奇妙な文明――

ポポ文明の成立について
順番に見ていくことにしよう。

第一節 ポポ文明の起源

さて諸君。
ではこの「ポポ文明」は、いつ始まったのだろうか。

歴史学者たちはよく、文明の起点を探そうとする。
王の誕生、宗教の成立、国家の建国。

しかしポポ文明は、そういうものから始まっていない。

記録によれば、最初の出来事はきわめて些細なものだった。

一羽の鳩が、どこかで鳴いたのである。

ポポ。

ただそれだけだ。

もちろん、その瞬間に誰かが
「文明が始まった」と宣言したわけではない。

誰かが笑った。
誰かが真似をした。
誰かがその音を面白がった。

やがて、その音は
スタンプになり、
句になり、
会話の合図になった。

そして気づいたときには、
一つの文化ができていた。

文明とは、たいそうな理念から始まるとは限らない。

むしろ多くの場合、
くだらない出来事の連続から生まれる。

ポポ文明も同じである。

ただ一つ違うのは、
この文明の人々は、それを恥ずかしがらなかったという点だ。

むしろ彼らはこう考えた。

「くだらなさは、文明の基礎である」

第二節 意味を削る文明

さて、ここで重要な特徴を確認しておこう。

ポポ文明は、意味を増やす文明ではない。

むしろ逆である。

意味を削る文明だ。

普通の文化は、物事を説明しようとする。

なぜそれが起きたのか。
何を意味しているのか。
どんな教訓があるのか。

しかしポポ文明では、
そうした説明はあまり歓迎されない。

説明を増やすと、
世界が重くなるからである。

その代わりに、この文明の人々は
一つの音を置く。

ポポッ。

それは答えではない。
結論でもない。

ただ、
「もうそれでいい」
という合図だ。

文明の中には、
物事を終わらせる知恵が必要である。

ポポ文明は、その知恵を
たった二音で表現したのである。

ポポッ。