イナン教授の人生相談

イナン教授のQ&A|簡単で美味しいレシピを教えてください

質問(Q) 簡単で美味しいレシピを教えてください。

回答(A)

人はな、
「簡単で美味しいもの」を求めすぎる。

それは料理に限らん。
人間関係も、仕事も、人生もや。

手間をかけずに満たされたい。
考えずに、うまくいきたい。

その欲求自体は、否定せん。

ただな。

ほんまに身体があたたまるもんは、
たいてい、少しだけ時間がかかる。

火を入れて、待つ。
煮えていくのを、見守る。

その過程を飛ばした瞬間、
「味」はあっても、「温度」は消える。

スンドゥブいうスン鍋がある。

派手やない。
映えもしない。
でも、静かに、ちゃんとあたたまる。

簡単でええ。
でもな、雑にはするな。

それだけ守ったら、
だいたいのもんは、うまくいく。

ポポッ🐦✨(火にかけたまま、急かさず待つ音)

スン鍋(スンドゥブ)の手順

本鍋の調理は、過度な感情を排し、
淡々と進めることを原則とする。

まず、小鍋にごま油を適量入れ、
弱めの火で静かに温める。

香りが立ち始めたら、
にんにくを投入する。
ここでテンションを上げすぎないこと。

豚肉、または海鮮を加え、
色が変わるまで見守る。
無駄に混ぜない。

水、または出汁を注ぎ、
豆腐をそのまま入れる。
崩すかどうかは、各自の判断に委ねる。

コチュジャン、唐辛子を加え、
静かに煮る。
怒りはここで溶かす。

あさりを入れ、口が開くのを待つ。
急かさない。

最後に卵を落とす。
崩すタイミングは、誰にも決められない。

ニラを添え、火を止める。
それ以上は足さない。

食す際は、会話を最小限に抑え、
各自の温度で向き合うこと。

なお、本鍋は一人前を基本とし、
無理な共有は推奨されない。

ポポッ🐦✨(煮えたぎらず、しかし確かに温まる音)

無意味帝国規定『スン鍋に関する禁止事項』

第一条
本鍋を前にして「いただきます」の声量を上げてはならない。

第二条
「うまっ!」を過剰に連呼することを禁ずる。
感じることと、騒ぐことは別である。

第三条
無意味に具材を追加してはならない。
盛りすぎは、心の乱れである。

第四条
他者の鍋に干渉してはならない。
スン民は、互いの温度を尊重する。

第五条
SNSへの過剰な投稿を禁ずる。
「映え」は本鍋の目的ではない。

第六条
煮えたぎらせすぎてはならない。
激情は、本鍋の本質に反する。

第七条
食事中に過去の失敗を蒸し返してはならない。
それは別鍋で行うこと。

第八条
食後すぐに評価を下してはならない。
余韻を味わう時間を確保すること。

ポポッ🐦✨(静けさだけが、正しく保たれた音)