無意味大学の旧校舎には、ある研究室があると言われている。
扉には紙が貼られている。
決して開けてはいけません
その下に、小さくこう書いてある。
材料は左の箱へ
学生たちは最初、その張り紙を冗談だと思っていた。
だが、いつしか誰かが不用品を箱に入れていくようになった。
曲がったハンガー。
片方だけの靴下。
輪ゴム。
古いクリアファイル。
そして、ある日。
毛玉だらけのタイツが、箱の中に入れられていた。
数日後、旧校舎の廊下に奇妙な装置が置かれていた。
ワイヤーハンガー。
その先に張られた、毛玉のタイツ。
貼り紙が添えられていた。
毛玉タイツ式ポップガード
声を守る装置
録音のとき、マイクの前に置く。
息による破裂音をやわらげる。
学生がそれを見つけて言った。
「これ、タイツですよね」
奥の方から、声がした。
フォッフォッフォッ……
「素材を見るのじゃ」
それ以来、無意味大学では、毛玉タイツを簡単に捨ててはいけないという奇妙な風習が生まれた。
旧校舎の研究室について、いまだ詳しいことはわかっていない。
ただ一つ確かなことがある。
その研究は、再生利用工学と呼ばれている。
そして学生の間では、こう言われている。
この研究の第一人者は、旧校舎の奥に住む白鳥教授である、と。