食べるという行為は、幸福と安堵をもたらす。その裏側で、必死に働く小さな臓器がいる。臓器ヒューマニズム文学シリーズ最新巻『膵臓くん、甘い誘惑に負けるな。──インスリン日記と血糖波乱万丈』は、“血糖値の気まぐれ”に振り回されながらも、毎日を誠実に支える膵臓くんの奮闘を描いた物語である。
主人公・膵臓くんは、控えめで心優しい青年。だが、仕事となれば話は別。食べ物が入るたびに、瞬時に状況を判断し、インスリンを送り出し、血糖値を整えていく。彼が書き続ける「インスリン日記」は、その日常の記録だ。そこには、甘いパンの急襲、ラーメンの濃厚攻撃、予想外の間食、突然の絶食──そんな波乱万丈の日々が書き連ねられている。
しかし、膵臓くんの一番の悩みは、“頑張りすぎてしまう自分”に気づけないことだ。血糖値が急上昇すると、焦ってインスリンを出しすぎる。逆に、糖が足りないときは不安になり、そわそわしてしまう。まるで、読者自身の「頑張りすぎ癖」や「焦りのスイッチ」をそのまま映すように、膵臓くんの働きは人間の心のゆらぎに驚くほど似ている。
ポポッ🕊✨
(その焦り、“意志の弱さ”やなくて“血糖の波に振り回されてるだけ”かもしれんで)
本書では、膵臓くんを中心に、肝臓マダム、筋肉兄弟、腸子ちゃん、脾臓さん、そしてシリーズでおなじみのポコリスなど、臓器メンバーが入り乱れて大活躍する。彼らは膵臓くんの負担が偏りすぎないよう、調整したり愚痴を聞いたり、時には笑わせたりして支える。体の内部は、実はチームワークで動いている。その仕組みを物語として読むと、血糖値の“波”がどれほど生活と心に影響していたかが自然と理解できる。
「血糖値が乱れると、なぜ気分まで揺れるのか」
「やる気が急に消えるのは、意思の弱さではなく“エネルギー切れ”かもしれない」
「甘いものに惹かれるのは、心か体のどちらがSOSを出しているのか」
こうした日常の謎も、物語の中でやさしく解きほぐされる。膵臓くんの不器用な頑張りや、仲間たちのやり取りを追うことで、読者は自分自身のペース配分を見直すきっかけを得る。
本書は、膵臓の役割を専門的に語る本ではなく、“人の生き方そのもの”を照らす物語である。頑張りすぎてしまう人へ、責任感が重すぎる人へ、甘い誘惑に揺れる人へ。インスリン日記を通して、身体の声を聞くヒントがそっと差し出される。
読み終えたとき、きっと膵臓くんに言いたくなるだろう。「いつもありがとう。これからは、少しゆっくりでええで」と。
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