諸君。
本日の講義は、ビーフンである。
ここで何人かの学生が、少し戸惑っている顔をしている。
「教授、それは主役でしょうか」と。
よい質問である。
ビーフンとは、しばしば主役にならない料理である。
焼きそばの隣。
チャーハンの横。
中華定食の片隅。
しかし私はここで断言する。
主役にならない料理ほど、文明の深い部分を支えている。
まず素材を見てみよう。
ビーフンは米でできている。
米は通常、粒として食べられる。
しかしビーフンでは、その粒を粉にし、
水とともに細い線へと変形させる。
つまりビーフンとは
粒文明が線文明へ変化した瞬間
なのである。
諸君。
粒は点である。
麺は線である。
点は集まると塊になる。
しかし線は絡み合い、広がる。
この違いは料理において非常に重要だ。
ご飯は「掴む」料理である。
一方、ビーフンは「絡める」料理である。
野菜
肉
エビ
香辛料
これらがすべて細い麺に絡まり、
一口の中で混ざり合う。
つまりビーフンは
味を混ぜるための装置なのである。
次に長さについて考えよう。
ビーフンは長い。
そして細い。
この細さは偶然ではない。
細い麺は火が通りやすく、
短時間で調理が完成する。
さらに、油を適度に吸い、
香りを全体に広げる。
つまりビーフンは
速く
軽く
よく絡む
という三つの特性を持つ。
ここで私は、
ビーフンを次のように定義したい。
ビーフンとは
B級グルメにおける調和装置
である。
強すぎず
弱すぎず
全体をまとめる。
これは料理だけではない。
社会にも必要な役割だ。
諸君の周りにもいるだろう。
目立たないが、
その人がいると場がまとまる人物が。
ビーフンとは、
そういう存在なのである。
最後に文化的観察を述べておこう。
ビーフンは中国南部や台湾、
東南アジアで広く食べられている。
つまり米文化の地域で
「米を麺にする」という発想が生まれた。
粒から線へ。
この変化は、
料理が環境に適応して進化した証拠である。
諸君。
ビーフンとは
粒の記憶を持った麺であり
主役にならない主役であり
味を結びつける細い橋である。
それはB級グルメ文明における
静かな知恵なのである。
……さて。
今日の講義の最後に、
ひとつだけ質問をしておこう。
諸君はビーフンを食べるとき
最初に麺だけを食べるだろうか。
それとも
野菜や肉と混ぜてから食べるだろうか。
もし後者なら、
諸君はすでに
ビーフン文明の作法
を理解していると言ってよい。
では、次回の講義でまた会おう。