B級グルメ文明論

お好み焼きの層構造理論|ウムラウト教授のB級グルメ文明論⑧

諸君。
本日の講義は、お好み焼きである。

そしてこの講義は、
B級グルメ文明論の一つの結論でもある。

まず観察から始めよう。

お好み焼きとは、
小麦粉の生地にキャベツや肉などを混ぜ、
鉄板の上で焼き上げる料理である。

この料理の特徴は、
混ぜる料理であることだ。

これまでの講義で扱った料理を思い出してほしい。

たい焼きは、形の合理性であった。
みたらし団子は、粘性の設計であった。
たこ焼きは、球体の生成であった。
ビーフンは、細線の調和であった。
ポテトフライは、長さと群れの美学であった。
おにぎりは、三角形の政治学であった。
コロッケは、殻による重力制御であった。

それぞれが独自の構造を持っていた。

しかしお好み焼きは違う。

お好み焼きは、
すべてを一つにする料理である。

キャベツ

小麦粉

ソース
マヨネーズ
かつお節
青のり

これらがすべて重なり、
一枚の円盤になる。

ここで重要なのが、層である。

お好み焼きは
混ぜているようでいて、
実は層構造を持っている。

底には鉄板で焼かれた生地。
その上にキャベツ。
さらに肉。
そしてソースとマヨネーズ。

つまりお好み焼きは

混沌のようでいて、秩序を持つ料理

なのである。

さらに注目すべきは
名前である。

「お好み焼き」

この料理は、
最初から完成形が決まっていない。

具材は自由。
焼き方も店ごとに違う。

つまりこの料理は

設計図のない料理

なのである。

しかし不思議なことに、
鉄板の上で焼かれると
誰が作っても

それなりにお好み焼きになる。

ここに私は
B級グルメ文明の本質を見る。

B級グルメとは

厳密なレシピではなく
人が集まることで成立する料理

なのである。

お好み焼き屋では、
人は鉄板を囲む。

焼く人がいて、
待つ人がいて、
食べる人がいる。

つまりお好み焼きとは

料理でありながら
同時に

小さな社会

でもある。

諸君。

たい焼きも
たこ焼きも
コロッケも

すべて街の中で生まれた料理であった。

しかしお好み焼きは、
それらをすべて包み込む。

混ぜる
焼く
分ける
食べる

このすべてが一つの鉄板の上で起こる。

だから私は言いたい。

お好み焼きとは

B級グルメ文明の完成形

なのである。

さて、講義の最後に
一つだけ質問をしておこう。

諸君は、お好み焼きを食べるとき

最初に端から食べるだろうか。

それとも
真ん中から切るだろうか。

もし後者なら、
それはすでに

鉄板民主主義

に参加していると言える。

では、諸君。

B級グルメ文明論の講義は
ここで一度区切りとしよう。

しかし街には、
まだ観察すべき料理が無数に残っている。

つまりこの講義は、
まだ終わらないのである。

では、また鉄板の前で会おう。