諸君。
本日の講義は、おにぎりである。
安心してほしい。
私は弁当の話をしているのではない。
文明の話をしているのである。
まず基本を確認しよう。
おにぎりとは、炊いた米を握り、
形を整えた食べ物である。
日本人にとって、
これほど身近な料理はない。
しかしここで、
ひとつの疑問が生まれる。
なぜ、おにぎりは三角形なのか。
米は本来、粒である。
粒は丸い。
それを集めても、普通は丸い塊になる。
それにもかかわらず、
人はわざわざ三角形にする。
これは偶然ではない。
三角形には、
非常に優れた特徴がある。
まず第一に、持ちやすい。
三角形には角がある。
その角を指で支えることで、
人は自然に安定しておにぎりを持つことができる。
もし完全な球体だったなら、
指の中で滑ってしまう。
つまり三角形とは
手の構造に適応した形なのである。
第二に、包みやすい。
おにぎりはしばしば海苔で包まれる。
三角形は
底辺
右斜面
左斜面
という三つの面を持つため、
海苔を巻いたときに形が安定する。
これもまた、
偶然ではない設計である。
第三に、象徴性である。
三角形は日本文化において
山の形を連想させる。
富士山。
神の山。
遠くから見える三角の峰。
つまり三角おにぎりは
小さな山の象徴
でもある。
昔の人々は山に神が宿ると考えた。
そのため、山の形をしたおにぎりには
どこか神聖な雰囲気がある。
ここで私は、
この形を「政治学」と呼びたい。
なぜなら、三角形とは
安定
象徴
機能
この三つを同時に満たす形だからである。
社会もまた同じだ。
安定だけでは退屈になる。
象徴だけでは空虚になる。
機能だけでは冷たい。
三つがそろって初めて、
形は意味を持つ。
おにぎりは、
そのことを静かに教えてくれる。
さて、講義の最後に
ひとつだけ質問をしておこう。
諸君は、おにぎりを食べるとき
最初に角から食べるだろうか。
それとも
底辺から食べるだろうか。
もし角からなら、
それは山を崩す行為である。
もし底辺からなら、
それは文明を解体する行為である。
どちらを選ぶかは、
諸君の自由である。
ただし覚えておいてほしい。
おにぎりとは
ただの米ではない。
それは
手の形
山の記憶
人の知恵
が合わさって生まれた、
小さな文明の結晶なのである。
では、次回の講義でまた会おう。