B級グルメ文明論

コロッケの重力問題|ウムラウト教授のB級グルメ文明論⑦

諸君。
本日の講義は、コロッケである。

安心してほしい。
私は惣菜の話をしているのではない。
文明の話をしているのである。

まず観察から始めよう。

コロッケとは、
じゃがいもを潰し、具材と混ぜ、
パン粉をまぶして油で揚げた料理である。

外側はカリッとしている。
内側は柔らかい。

ここで一つの疑問が生まれる。

なぜ、あの柔らかい中身が
揚げている途中で崩れないのか。

諸君。
これこそが、コロッケの重力問題である。

じゃがいもは柔らかい。
油の中で揚げれば、
本来ならば崩れてしまうはずだ。

しかし実際には崩れない。

その理由は、外側の構造にある。

コロッケの表面には
小麦粉

パン粉

という三つの層が存在する。

これらは油の中で一体化し、
薄い殻を作る。

つまりコロッケは

外側が殻、内側が柔らかい惑星

なのである。

この殻が完成すると、
内部のじゃがいもは
重力によって崩れることなく保たれる。

さらに、パン粉の存在も重要だ。

パン粉は細かな空気を含んでいる。
揚げるとその空気が膨らみ、
サクサクとした食感を生む。

つまりパン粉は

食感の装置

でもある。

さて、ここでコロッケの社会的役割を考えよう。

コロッケは高級料理ではない。
商店街の肉屋
学校帰りの買い食い
家庭の夕食

そうした場所で食べられる料理である。

しかしコロッケには
ひとつの特徴がある。

それは

温かさの料理

であるということだ。

コロッケは冷たいままでは成立しない。
揚げたて、あるいは温めた状態で食べる。

つまりコロッケとは

油の熱
じゃがいもの甘み
衣の音

その三つが同時に現れる瞬間の料理なのである。

ここで私はコロッケを
次のように定義したい。

コロッケとは

柔らかさを守る殻の哲学

である。

外は強く
中は柔らかい。

これは料理だけではない。
人間にも必要な構造だ。

さて、講義の最後に
一つだけ質問をしておこう。

諸君はコロッケを食べるとき

ソースをかけるだろうか。

それとも
何もかけずに食べるだろうか。

もし後者なら、
諸君はすでに

コロッケ本体主義

に到達している。

では、次回の講義でまた会おう。