日本語講座

イナン教授のかしこ語講座 第4回|褒めるスン芸──過剰に持ち上げず、きちんと尊重する技術

イナン教授のかしこ語講座 第4回|褒めるスン芸──過剰に持ち上げず、きちんと尊重する技術

この講座では、「褒める」という行為を、あらためて整えます。
日本語の褒め言葉は、ともすると過剰になったり、逆に軽くなったりしがちです。
持ち上げすぎれば嘘っぽくなり、控えすぎれば伝わらない。
その間にあるのが、褒めるスン芸です。

この講座のゴールは、
「媚びずに、しかしちゃんと届く褒め方」を身につけること。
相手を評価するのではなく、
“事実としての良さ”をそのまま言葉にする感覚を育てます。

1.褒めるスン芸とは何か

褒めるスン芸は、相手を持ち上げる技術ではありません。
観察した事実を、そのまま言葉にする技術です。

  • 過剰な評価を乗せない
  • 比較や上下関係を持ち込まない
  • 「すごい」ではなく、「どこがどう良いか」を言語化する

スン芸の褒めは、軽くも重くもない。
“ちょうどいい重さで置かれた言葉”です。

2.よくあるシチュエーション

褒めるスン芸が必要になる場面の一例です。

  • 相手の成果や努力を、ちゃんと認めたいとき
  • 過剰なお世辞にしたくない場面
  • 上下関係がある中で、自然に敬意を示したいとき
  • 「褒めるのが苦手」で、つい曖昧にしてしまうとき

褒め方は、その人の“距離感のセンス”がそのまま出ます。
スン芸は、その距離を整えるための技術でもあります。

3.NGワードと、褒めの方向性

まず、避けたほうがよい言い方です。

  • 過剰な持ち上げ(例:「天才ですね!」)
  • 比較を含む褒め(例:「他の人より全然いい」)
  • 中身のない褒め(例:「すごいですね!」だけで終わる)

褒めるスン芸では、
「評価」ではなく「観察」を言葉にするのが基本です。

褒めるとは、「上から評価すること」ではありません。
ただ、「見えている良さ」を、そのまま差し出すこと。
それだけで、言葉は十分に届きます。

4.具体的な褒めるスン芸の例

例1:仕事や成果を褒めるとき

NG例:「めちゃくちゃすごいですね!」

かしこ語の一例:

  • 「あの部分の組み立て方が、とても分かりやすかったです」
  • 「細かいところまで丁寧に作られているのが伝わってきました」

例2:人柄や姿勢を褒めるとき

NG例:「本当にいい人ですね!」

かしこ語の一例:

  • 「ああいう場面で、あの対応ができるのはすごいと思いました」
  • 「周りをよく見て動いているのが印象的でした」

例3:継続や努力を褒めるとき

NG例:「努力家ですね!」

かしこ語の一例:

  • 「あのペースで続けているのは、簡単ではないと思います」
  • 「継続の仕方に、無理がないのが伝わってきます」

スン芸の褒めは、相手を“持ち上げる”のではなく、
「見えている事実を、正確に言葉にする」ことにあります。

5.自分なりの褒めフレーズを持つ

褒めるのが苦手な人ほど、「すごいですね」で止まりがちです。
そこで、自分の観察をそのまま言葉にする練習が効いてきます。

次の観点で、自分の褒め方を整えてみてください。

  • 「どこが良かったか」を具体的に言えているか
  • 評価ではなく、事実として伝えられているか
  • 自分の言葉として自然に出てくるか

いい褒め言葉は、派手ではありません。
しかし、あとからじわっと効いてきます。
それは、その言葉が“観察された事実”に支えられているからです。

6.今回のまとめ

  • 褒めるスン芸は、「観察した事実をそのまま言葉にする技術」である
  • 過剰な持ち上げや比較は避ける
  • 「すごい」ではなく、「どこがどう良いか」を言語化する
  • 自然に言える自分なりの褒め方を持つと、関係が整う

褒めるという行為は、相手との距離を整える行為でもあります。
ちょうどいい言葉で、ちょうどいい距離を保つ。
それが、褒めるスン芸の役割です。

これで、かしこ語講座の基礎4回はひと通りです。
次は、実践編として「かしこ語の組み合わせ」や「場面別運用」を扱っていきます。

ここで紹介しているかしこ語は、ほんの一部です。