日本語講座

言葉の正体 第一講 古い顔をした新語

昔からある言葉ほど、疑われにくい。

それは、本当に昔から同じ意味で使われてきたからではない。長く残ってきた言葉には、どこか安心感がある。

すでに社会に馴染んでいて、説明しなくても通じるように見える。だが、その中身まで昔のままだとは限らない。言葉は同じでも、その働きは少しずつ変わっていく。

むしろ注意が必要なのは、見た目が古いまま、中身だけが更新されている言葉である。

新語であれば「最近の言い方だ」と意識されるが、昔からあるように見える言葉は、その変化に気づかれにくい。

違和感が生まれていても、「前からこういうものだった」と処理されやすい。

「空気を読む」という言い回しも、その代表のひとつである。

今ではこの言葉は、人づきあいや集団行動の中でごく自然に使われている。

だが改めて考えると、「空気」とは何なのかを正確に説明するのは難しい。誰もが知っているようで、誰もきちんと定義しない。

それでも確かに存在していて、人の行動を左右する。日本語の「空気」は、そんな不思議な力を持つ言葉である。