あなたを誇る、私が好き

「すごいね」

「素敵な親子ですね」

「勇気もらいました」

スマホの画面には、そんな言葉が並んでいる。

私は、あなたのことを発信している。

小さな頃からずっと。

できなかったことが、できるようになった日。

初めての一歩。

うまく言えなかった言葉が、少しだけ届いた瞬間。

全部、全部、嬉しくて。

どうしても残しておきたくて。

それを、誰かに見てほしくて。

気がつけば、フォロワーが増えていた。

知らない人たちが、あなたのことを知っている。

そして、私のことも。

「こんなに愛されて幸せですね」

「あなたみたいなお母さん、素敵です」

……そうなのかな。

私はただ、あなたを誇りに思っているだけなのに。

ある日、あなたが言った。

「ねえ」

(少しの間)

「わたしって、見せたい存在やったんやろ?」

その言葉の意味が、すぐにはわからなかった。

いや、わかりたくなかったのかもしれない。

「そんなことないよ」

「あなたのことが大事やから」

「あなたに誇りを持ってるから」

私は、そう答えた。

でも、あなたは何も言わなかった。

ただ、少しだけ、距離をとった。

その沈黙が、やけに長く感じた。

(間)

私は、何をしていたんやろう。

あなたに伝えたかったのは、何やったんやろう。

あなたに見てほしかったのか。

誰かに見てほしかったのか。

それとも。

「こんなに頑張ってる私」を、

誰かに見てほしかったのか。

(間)

私は、あなたを誇りに思っている。

でも。

その誇りは、

あなたのためのものやったんやろうか。

それとも、

私のためのものやったんやろうか。

(スマホの通知音)

「素敵な親子ですね」

私は、画面を閉じる。

そして、あなたの名前を呼ぼうとして、

少しだけ、ためらう。

関連作品