旧校舎の突き当たりに、ひとつの研究室がある。
扉には名前が残っているが、
在籍記録はどこにも見当たらない。
白鳥教授。
その人物が実在したのか、
いまもここにいるのか、
確かめた者はいない。
ただ、この部屋には、
他では扱われなかった記録が集められている。
捨てられなかったもの。
説明のつかなかったもの。
意味に分類されなかった断片。
それらは整理されることなく、
しかし丁寧に、残されている。
白鳥教授は、
それらを「廃棄物」とは呼ばなかったという。
この部屋では、
価値は定義されない。
ただ、そこにあるものが、
そこにあるまま、置かれている。
——記録は、机の上にある。