未確認イーダ図鑑
文明が続くかぎり、原始人もまた進化する。
『大人のイーダ図鑑』では、代表的なイーダをいくつか紹介した。しかし、人類の原始人はそれだけではない。まだ名前のついていないイーダは、日常のあちこちで火を囲んでいる。
ここは、その観察記録である。誰かを断罪するためではない。人間という生き物を、少し離れた場所から眺めるための図鑑だ。見つけたら、少し笑ってほしい。ときどき、自分の顔にも見えるかもしれない。それでいい。原始人は、誰の中にもいる。
SNSイーダ
いいねの数が、火力になる原始人。
投稿ボタンの向こうには、見えない群れがいる。拍手、共感、賞賛。反応が集まるほど、焚き火は大きくなる。
問題は、火が消えたときだ。通知が静まり、画面が暗くなると、原始人は少し不安になる。火が小さくなった気がするからだ。SNSイーダは、今日も火種を探している。
共感イーダ
「わかる」という言葉で、群れを作る原始人。
人は理解されると安心する。だから共感は温かい。だが、ときどきその温かさは、境界を溶かしすぎる。
同じ痛み。同じ怒り。同じ敵。共感が深まるほど、外の世界は単純になる。共感イーダは悪ではない。ただ、火の周りに集まりすぎると、外の風が見えなくなる。
成功イーダ
高台に立つことで安心する原始人。
賞、実績、フォロワー数。文明はたくさんの「高さ」を作った。高い場所は見晴らしがいい。そして、少し安心する。
だが高台には風も吹く。成功イーダは、ときどき自分の足元を確かめる。ここから落ちたらどうなるのか、と。火のそばに戻ると、少しだけほっとする。
悟りイーダ
すべてを越えた顔をする原始人。
怒らない。争わない。執着もしない。それは確かに成熟かもしれない。
だが、ときどき原始人は思う。「それ、ほんまに悟りなん?」悟りイーダは高い場所に座る。とても静かな場所だ。だが、静かすぎると、人の声が遠くなることもある。原始人は、完全には消えない。
観察は続く
未確認イーダは、まだいる。文明が続く限り、原始人は姿を変える。もし新しいイーダを見つけたら、静かに観察してほしい。それは、誰かの姿かもしれない。あるいは、自分の姿かもしれない。ここは、観察所である。
あなたの見つけたイーダも、いつかここに記録されるかもしれない。