社会観察録『鼻だけがセレブになった日』〜ティッシュに貴族意識を植え付けた革命〜

鼻は、地味なパーツだと思っていた。

顔の中でも、主張は控えめ。
特別に褒められることもない。
どちらかといえば、トラブル担当である。

そんな鼻に、ある日、転機が訪れた。

家に「鼻セレブ」が置かれたのである。

その瞬間、私の鼻は、
市民から貴族へと昇格した。


しかし、よく考えてみてほしい。

鼻にしか使わないティッシュに、
なぜ“セレブ”という称号が与えられているのか。

鼻がセレブになって、どうするのか。

意味はわからない。
だが、なぜか手が伸びる。


パッケージもまた、不思議である。

真っ白な箱。
中央に配置された、動物の顔。

高級そうな装飾は、何ひとつない。

それなのに、なぜか高級感がある。

もしこれが黒い箱で、
金色のロゴでも入っていたら、
逆に手に取らなかった気がする。


名前と見た目の、ちぐはぐ。

それがむしろ、信頼を生んでいる。

やりすぎていない。
気取っていない。
なのに、どこか特別である。


風邪をひいたときだけ許される、
小さな贅沢。

箱に印刷された無表情のアザラシが、
「今日は大事にしてね」と、
静かに語りかけてくるような気がする。


鼻セレブは、
美しく外すことで、人の心に残る。

ネーミングとデザインの妙が、
静かに完成しているプロダクトである。

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