買ったときにはもう、
気持ちの半分は救われとったんや。
「これ食べたらちょっと回復するやろ」
「今日はよくがんばったしな」
そんな小さな希望を、カバンに入れて帰ってきたんや。
でも、開かんねん。
あの……ピッチリ張り付いた透明のフィルムが。
爪でカリカリしてもダメ。
ティッシュで掴んでも滑る。
あのちょっとだけ浮いてる“めくりしろ”が、どこにも、ない。
“これは誰向けの開封設計やねん”って、
思った瞬間、
心がガシャーンって、どっかで折れた音した。
自分で選んで、自分で買って、
いま自分で開けようとしてるのに、
“その一手が、できへん”っていう絶望感。
チョコが悪いんちゃう。
メーカーのせいでもない。
ただ、
“わたしの今日”には、
そのフィルムが、
越えられへん壁やっただけ。
「甘いもん食べて元気出そ」なんて、
そんな単純なもんちゃう日、あるんよ。
フィルムは、結局キッチンバサミで切った。
そのときの“敗北感”、忘れられへん。
でも、
それでも、
あのチョコは食べた。
「今日も生きてたで」ってサインとして、
苦味混じりのカカオが、
舌の上にじんわり残った。
(了)