掘らない人は、畑のそばに腰を下ろしていた。
何を植えたかは覚えていない。
覚える必要がなかった。
横にはインインがいた。
インインは、芽が出ていない土を見て、
「まだやな」
とも
「もうすぐやな」
とも言わなかった。
ただ、土の表面をじっと見ていた。
風が吹いた。
土は何も語らなかった。
それで十分だった。
掘る人は、同じ畑の反対側に立っていた。
手には小さなスコップ。
「確認せな気が済まへん」
そう言って、土を掘り返す。
横にはルンルンがいた。
ルンルンは掘られるたびに、
「ほら、何もないやろ」
と笑った。
掘る人は、少し安心した。
でも、掘り起こされた穴は、
元に戻されることはなかった。
数日後。
掘らない人の足元で、
何かが少しだけ土を押し上げた。
インインは言った。
「名前、まだつけんとこ」
掘る人の畑は、きれいに整っていた。
何も出てこない。
予定通りだった。
ルンルンは言った。
「ほらな。効率ええやろ」
掘らない人は、芽を数えなかった。
掘る人は、結果を数えた。
インインは、芽が出ても騒がなかった。
ルンルンは、芽が出ないことに慣れていった。
どちらの畑も、静かだった。
ただ一方には、
まだ起きていない未来が残っていて、
もう一方には、
起きなかったことにすら気づかれない空白が残った。