昔々あるところに、 なんでも写真に撮るおばあさんと、 その様子を横で見ているおじいさんがおりました——。
おばあさんは、 メモ代わりに、 なんでも写真を撮っていたのです。
スーパーの特売。 駐車場の番号。 病院の予約時間。 WiFiのパスワード。
とりあえず撮る。
それが、 おばあさん流だったのです——。
しかし時々、 何のために撮ったのか、 自分でも分からなくなることがありました。
レシート。 謎の床。 半分切れたチラシ。
そして、 なぜか七枚連続で撮られた天井——。
おばあさんは、 写真フォルダを見つめながら、 静かにつぶやきました。
「……なんやこれ」
そう言いながら、 “あとで見る用” の写真を、 ぽちぽち消していたのです。
「メモリー食うんよなぁ☺️」
ある日のこと。
おじいさんは、 ぽつりと言いました。
「……たまには、 ワシも写してくれ。」
おばあさんのスマホには、 値札やサバ缶の賞味期限ばかりが増え、 おじいさんの写真は、 ほとんど入っていなかったのです——。
「ワシ、 電柱より出番少ないやないか☺️」
おばあさんは、 少し笑いながら、 静かにスマホを向けました。
しかし——。
なぜか、 “インカメ” になっていたのです。
画面いっぱいに映る、 おばあさん。
そして、 端っこで小さく映り込むおじいさん——。
「ワシを撮ってくれ言うたんやが……」
おじいさんは、 少し寂しそうに笑いました。
おばあさんは、 写真を見つめながら、 静かに言いました。
「押したつもりやったんよ☺️」
しかしその写真は、 なぜか削除されず、 今もスマホの奥に残っていると伝えられております——。