昔々あるところに、 最近やたら“自然な暮らし”に目覚めたおばあさんと、 それを横で見守っているおじいさんがおりました——。
きっかけは、 一本の動画でした。
“本来の自分を取り戻す暮らし”
という題名に惹かれたおばあさんは、 その日から少しずつ、 生活を変え始めたのです——。
白湯。 発酵食品。 無添加。 オーガニック。
おばあさんは、 木のスプーンで味噌汁を混ぜながら、 静かに頷いておりました。
「やっぱり、 自然がええんよ☺️」
その頃にはもう、 家の調味料棚から、 見たことのない塩が増え始めていたのです。
岩塩。 海塩。 天日塩。 なんか強そうな塩——。
おじいさんは、 その違いがまったく分かりません。
「塩は、 塩ちゃうんかのう……」
しかしおばあさんは、 そんな疑問には耳を貸しませんでした。
ある日のこと。
おじいさんが、 いつものように電子レンジを使おうとすると、 おばあさんが静かに言いました。
「最近、 電磁波を避けとるんよ☺️」
おじいさんは、 ラップを持ったまま固まりました。
「……ほな、 どうやって温めるんや?」
おばあさんは、 土鍋を見つめながら、 静かに答えました。
「火や☺️」
その日からおじいさんは、 味噌汁ひとつ温めるにも、 やたら時間がかかるようになったのです——。
さらにおばあさんは、 観葉植物を増やし始めました。
窓辺。 棚。 玄関。
気づけば家の中は、 かなり森に近づいていたのです——。
おじいさんは、 葉っぱを避けながら、 静かにつぶやきました。
「ワシの家、 少しずつ自然へ還っとるんやが……」
おばあさんは、 ハーブティーをすすりながら、 満足そうに微笑みました。
「ズブズブや☺️」
そうして今日も、 おばあさんは静かに、 自然信仰へ沈んでいくのでした——。