毛にもめげず
毛にもたじろがず
毛にもすがらず
毛にも誇らず
ただ黙って
皮膚の上に生きている
東に、眉を描き足す人あれば
そっと寄り添い
西に、脱毛に疲れた人あれば
静かに揺れる
南に、カツラの下で汗をかく人あれば
やさしく風を通し
北に、まつ毛美容液を信じる人あれば
そっと伸びるふりをする
濡れても、
ちぢれても、
逆立っても、
からまっても、
それでも毛は
生きようとする
我らは毛の民
一度抜けた毛も
魂ごと否定されはしない
『毛にもめげず──ケの民衆詩』
【中盤:毛の反逆と誇りの章】
たとえ世界が
「整えてナンボ」と言おうとも
たとえCMが
「毛は隠すべき」と囁こうとも
毛は叫ばぬ
ただ、逆立つ。
つむじの渦を
右へ巻こうが左へ巻こうが
誰が決めたんや
おまえの毛流(もうりゅう)は
おまえの人生(けいれき)やないか
ムダ毛と呼ばれて、はや百年
わたしらは“ムダ”やなかった
いざというとき
肌を守ってきたんやから。
鼻の中の
あの一本に
今日もホコリを止められて
誰が気づくか
その功績に
🌀そして──
【終盤:毛から生まれる希望】
抜けた毛が
ただのゴミやと思うな
そこにはまだ
未練と愛と想いが詰まっとる。
櫛にからまる毛は
言いたかったこと
伝えられなかったこと
今日の疲れや
明日の不安を
すべて引き受けて、抜けていった
それでも我らは
また、朝を迎える
髪を撫で
眉を描き
まつ毛をカールし
誰かと会うために
今日も毛は
“そこにある”
🎤ラストの一節
毛にめげぬ者こそ
世界を撫でる者なり