ルンルンは海辺の町を歩いていた。
靴の裏に砂がくっつくたび、
なんかちょっと得した気分になって、
ルンルンは鼻歌を変えた。
その日、風がすこしだけ、
潮の匂いにまじって
なにか香ばしいものを連れてきた。
ふと顔をあげると
おばあちゃんが干し網を揺らしていた。
ピンク色の、ちいさな命たちが
春の光に透けている。
「桜エビや」
ルンルンは誰に言うでもなくつぶやいた。
そして、ちょっと泣きそうになった。
理由は、ない。
干されて、乾いて、軽くなって、
それでも、ちゃんと春の匂いを持ってる。
そんな桜エビが、ちょっと
かっこよく思えたんや。
ルンルンは、干し網に向かって
そっとウィンクした。
たぶんエビたちも、
一瞬だけウィンクを返してきたような気がした。
🐿️ あとがき(ルンルンのひとこと)
ルンルンは思った。
「泣きたいときって、
桜エビのにおいが、
一番やさしいんちゃうかな。」
知らんけど。