ビルは、何も言わない。
ただ四角く、まっすぐに、
用事のある人間だけを受け入れている。
その入り口に、
バナナが置いてあった。
でかい。
黄色い。
明らかに、仕事をしていない。
通り道を、ふさいでいる。
無視しようとすればするほど、
視界に入ってくる。
「あの、これ……バナナですよね?」
誰かが言う。
それでいい。
会話は、もう始まっている。
用事なんて、あとでいい。
まずはこの、どうしようもない違和感を、
誰かと分け合うこと。
ビルは、何も言わない。
バナナだけが、
すべてを知っている。