あの日、袋は静かに開かれた。
見た目は、いつもの柿ピー。
だが──
ひと口で、すべてが変わった。
「かっっっら!!!!」
舌が焼ける。
喉が拒否する。
脳が一瞬でパニックになる。
それが、伝説の──
「激辛柿ピー事件」である。
刺激は、制御できへん。
辛さってな、逃げ場ないねん。
水飲んでも消えへんし、
無かったことにもできへん。
ただ、来る。
容赦なく、来る。
感情も一緒や。
怒りも、不安も、焦りも、
「来るな」って言うても来る。
止められへん。
ピーを探せ。
そんなとき、人はどうするか。
探すねん。
ピーを。
あの、やわらかいやつを。
舌をなだめてくれる存在を。
ピーはな、辛さを消すわけやない。
ただ、「耐えられる状態」にしてくれるんや。
これが大事なんや。
耐えられるかどうか、それだけや。
人生の辛さも同じや。
全部消そうとするから、しんどいねん。
無理やねん、それは。
せやから、ピーを持っとけ。
人でもええ。
場所でもええ。
時間でもええ。
「ちょっと落ち着ける何か」
それがあるだけで、人は持ちこたえられる。
辛さの中で、旨味は生まれる。
カキタネ仙人は言うた。
「辛さを知らぬ者に、旨味は語れぬ。」
「だが、辛さに飲まれる者は、ただ苦しむだけじゃ。」
…なるほどな。
大事なんは、“バランス”や。
攻める柿と、支えるピー。
刺激と、緩和。
その両方があってこそ、味になる。
激辛柿ピーは、ただの事故やったかもしれん。
でもな──
あの一袋で、人は知るんや。
「辛さの扱い方」を。