スナック哲学部|カキタネ仙人講話録⑨「落ちた種にこそ、物語が宿る」〜失敗・こぼれ・恥の哲学〜

袋から出そうとして、
手元が狂う。

パラパラ……と、
いくつかの種が床に落ちる。

一瞬、空気が止まる。

「あ……やってもうた」

拾うか。
捨てるか。
見なかったことにするか。

その数秒に、
ちょっとした人生が詰まってる。

落ちた瞬間に、価値が変わる。

さっきまで、袋の中では
普通に食べられてたのに。

床に落ちた瞬間、
扱いが変わる。

「もうアカンやつ」になる。

でもな。

中身は、何も変わってへんねん。

ただ、“落ちた”という事実が、
意味を変えてしまう。

人も、よう似た扱いされる。

一回の失敗。
一度のミス。
たった一つのズレ。

それだけで、
評価がガラッと変わることがある。

「あの人はもうアカン」
「信用できへん」って。

でもな。

ほんまに中身まで変わったんか?

違うやろ。

落ちたからこそ、見えるもんがある。

床に落ちた種は、
袋の中とは違う景色を見る。

冷たさ。
硬さ。
誰にも拾われへん時間。

でも、その分だけ、
見えるもんも増える。

「なんで自分は落ちたんか」
「どうしたら戻れるんか」

考える余白ができる。

物語は、こぼれたところから始まる。

カキタネ仙人は言うた。

「袋の中にあるうちは、ただの一粒じゃ。」

「落ちて初めて、その種は物語を持つ。」

…ええな。

完璧に収まってるだけの人生には、
あんまりドラマは生まれへん。

ちょっとこぼれて、
ちょっと恥かいて、

そこから、話が始まる。

拾うかどうかは、自分で決めろ。

落ちた種を、どうするか。

拾うか、捨てるか。

それは人それぞれや。

でもな。

自分が落ちたときくらいは、
自分で決めたらええ。

「まだいける」って思うなら、拾え。

カキタネ仙人は最後にこう言うた。

「落ちたことを、恥じるな。」

「そこから始まる味もあるのじゃ。」

…ほんま、それやな。

床に落ちた一粒にも、
ちゃんと続きがあるんや。

関連作品