昔々あるところに、 “コトッ” という音に敏感になったおじいさんと、 すっかり置き配生活に慣れたおばあさんがおりました——。
最近の村では、 人と人が、 あまり直接会わなくなっておりました。
荷物は、 静かに現れ、 静かに消えていきます。
ある日のこと。
マンションの廊下で、 インターホンの音が鳴りました。
「お荷物のお届けです〜☺️」
すると部屋の奥から、 住人の声が聞こえてきたのです。
「入口付近に置いといてください☺️」
しかし——。
配達員は、 すでにマンションの中まで来ておりました。
あと数歩で、 玄関だったのです——。
おじいさんは、 その光景を見ながら、 静かに固まりました。
「……もう、 おるやないか。」
しかし配達員は、 何も言いません。
慣れた動きで荷物を置くと、 風のように去って行ったのです。
おじいさんは、 その後ろ姿を見ながら、 ぽつりと呟きました。
「最近の村人、 会う寸前で避けるんやなぁ……」
おばあさんは、 荷物を抱えながら、 静かに頷きました。
「お互い、 気ぃ遣っとるんよ☺️」
その頃にはもう、 村人たちは、 存在だけを確認し合いながら、 接触せずに暮らす術を身につけ始めていたのです——。
ある者は、 置き配。
ある者は、 セルフレジ。
ある者は、 モバイルオーダー。
おじいさんは、 静かに空を見上げました。
「そのうち、 会話も全部アプリになるんかのう……」
おばあさんは、 スマホを見ながら答えました。
「もう半分、 なっとる☺️」
そうして今日も村では、 誰とも会わぬまま、 静かに生活だけが回り続けているのでした——。