あたし、自販機が好きやねん。
新品のピカピカしたやつ。
金属の冷たさとか、ボタンの並びとか、
見かけるたびに
「これ持って帰れたらええのに」って思う。
観光地の変な自販機もええけど、
あたしが欲しいのは、ちょっと違う。
住宅街にひっそり立ってる、異物。
通りすがった人の人生を、
ほんの少しだけ狂わせるやつ。
自販機を買う夢を見た。
起きてすぐ調べたら、思ってたより高かった。
でも、欲しい。
住宅街の端っこに置きたい。
中には、変ネタ詩が一編ずつ入った
トートバッグを入れる。
誰が買うのかはわからない。
自分でも買わないかもしれない。
でも、そういうものが、そこにあってほしい。
たとえば、
「一口食べて無言になったグラタンについての詩」
「貼る演技力。冷蔵庫の裏に」
「自販機に恋したカエルの話」
どのボタンを押しても、出てくるのはトートバッグ。
でも、中の詩は完全にランダム。
全部ハズレっぽく見えるのに、
ちょっと気になるやつ。
夜中にひとりで買う人とか、
昼休みに同僚と見に来て、
「なんなんこれ」って笑う人とか。
トートを持ってるだけで、
妙な会話が始まったらいい。
買わなくてもいい。
「ある」ということ自体が、
ちょっとした発信になったらいい。
ちなみに、トートバッグは折りたたんで筒状にして、
缶ジュースみたいに出てくる仕様にしたい。
取り出すとき、
「え、冷たい……」って一瞬思ってほしい。
でもそれは、
自販機の冷却機能のせいじゃない。
そういう仕様や。
中に、凍った詩が入っているからや。
だから少しだけ時間をかけて、
解凍して読んでほしい。