昔々あるところに、 顔認証に少し疲れているおばあさんと、 機械に顔を拒否され続けているおじいさんがおりました——。
ある日のこと。
おじいさんは、 スマホを開こうとしておりました。
しかし——。
「Face IDを認識できません」
画面は、 何度やっても開きません。
おじいさんは、 スマホを少し離したり、 近づけたりしながら、 困った顔をしておりました。
「……ワシの顔を、 認証せんのう。」
おばあさんは、 横で静かにお茶をすすっております。
「暗いんちゃう☺️」
しかし明るい場所へ移動しても、 結果は同じでした。
「もう一度やり直してください」
おじいさんは、 だんだん腹が立ってきました。
「昨日までワシやったやないか!!」
その頃にはもう、 機械とおじいさんの間に、 妙な空気が流れ始めていたのです——。
おばあさんは、 スマホを受け取ると、 一瞬で開きました。
「ほら☺️」
おじいさんは、 納得できません。
「なんでおばあさんは通るんや!?」
おばあさんは、 静かに言いました。
「機械にも、 相性あるんよ☺️」
しかし問題は、 そこからでした。
おじいさんは、 顔認証されるために、 少しずつ“認証されそうな顔”を研究し始めたのです——。
目を開く角度。 顎の位置。 光の向き。
気づけば、 鏡の前で、 かなり真剣な顔をしておりました。
おばあさんは、 その様子を見ながら、 静かにつぶやきました。
「最近、 機械の方に寄っていっとるなぁ☺️」
その夜。
ついに顔認証が成功した瞬間、 おじいさんは、 少し誇らしげに言いました。
「……今日は、 通った☺️」
その姿はまるで、 村の関所を突破した旅人のようだったと、 今も語り継がれております——。