簿記詩 第三篇「声の入金」

人前で声を渡すその瞬間、
世界の口座がひらく。

空気の粒が震えて、
言葉が音へと変わる。

拍手が一枚の紙幣みたいに届いて、
胸の残高がそっと増えていく。

誰も見てへんようで、
ちゃんと誰かが聞いている。

舞台の片隅の帳簿に、
“今日も生きてた”と書き込む。

現金ではなく、感情の入金。
振込元:観客。
受取人:声の人。

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