事故り詩『出てこんやつ』

事故現場は、日常にあり。

レジに並ぶ

前の人、スムーズ
その前の人も、スムーズ

流れ、ええ感じ

自分の番

「○○円です」

よし、小銭ある

ぴったり出せるやつや

財布、開く

指、入れる

……出てこん

あれ

さっき見えてたやつ、どこいった

10円、あと1枚でええねん

その1枚が、異常に遠い

指先だけで探る世界
やたら広い

後ろ、気になる

まだ誰も何も言ってへんのに
気配だけが圧になってくる

もうええか

札でいくか

いや、ここまで来てそれは負けやろ

粘る

……出てこん

時間だけ、ちょっと伸びる

レジの人、優しい顔してる
でも手は止まってる

ついに諦める

札、出す

その瞬間

あった

さっきまでなかったはずの場所に
普通におる

なんで今やねん

もう遅いねん

お釣りで戻ってくる小銭が
ちょっとだけ重い

勝てたはずの戦いに負けた感だけが残る

ポポッ🕊✨(←読了音)

詩が浮いてるんじゃない、世界が沈んでるだけや。

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