事故り詩『閉めたっけ』

事故現場は、日常にあり。

家を出たあとや

ドア閉めて
鍵かけて
エレベーター乗って

いつもの流れ

その途中で

ふと、よぎる

「……ガス」

閉めたっけ

いや、閉めたはずや

昨日も閉めたし
習慣になってるし

たぶん大丈夫や

でもな

“たぶん”って言うてる時点で
もう大丈夫ちゃうねん

頭の中で再生する

コンロの前に立つ自分
つまみをひねる手

……そこ、曖昧やねん

ひねった記憶が
あるような、ないような

ここで一回戻ったら
間に合う

でもな

エレベーター、もう降りてる

靴も履いてる
カバンも持ってる

ここで戻るのは
ちょっと負けた気がする

そのまま外に出る

歩きながらも
頭の中はずっとキッチン

火、出てないか
つきっぱなしちゃうか
いや、さすがにそれはないやろ

でもな

“さすがに”って言うてる時点で
もうアウトやねん

世界は普通に進んでるのに
自分だけ、家の中に取り残されてる

結局

一日中、どっかに引っかかってる

帰って確認するまで
終わらへんやつ

ドア開ける

ガス、閉まってる

知ってたわ

……知ってたけどな

ポポッ🕊✨(←読了音)

詩が浮いてるんじゃない、世界が沈んでるだけや。

関連作品