世界は、とうとう疲れていた。
戦争をやめる方法は、ずっと探されていた。
だが、そのどれもが、どこかで破綻した。
そこで、ある日。
「もう首相同士でやればええんちゃうか」
誰かがそう言った。
笑いは起きなかった。
なぜなら、誰もが少しだけ、それを「いい」と思ってしまったからだ。
かくして――
戦争は、競技となった。
ルールは簡単である。
・戦うのは各国の首相のみ
・一般市民の巻き込みは禁止
・武器の使用は禁止(競技による)
・勝敗は一本で決する
そして、最も重要なルールがひとつ。
勝っても、はしゃいだら負け。
「……それ、めっちゃ大事やな」
会議は満場一致で可決された。
初の競技は、剣道とされた。
理由は特にない。
「なんとなく、ええやん」という空気で決まった。
試合当日。
各国の首相たちが、道場に集められた。
誰もがスーツではない。
全員が、胴着である。
「……ほんまにやるんやな」
日本の首相が、小さく呟いた。
その横で、ある国の代表が言った。
「私は柔道の方が良かったのだが」
誰も反応しなかった。
審判が静かに手を上げる。
「――始め」
その瞬間、世界中の中継が一斉に繋がった。
戦争は、初めて、
“観戦されるもの”になった。