無意味連作劇『首相決戦』第十八話 見つからないまま

時間は、容赦なく進んでいた。

残り、一分。

都市は、相変わらず静かだった。

人々は動いている。
音もある。
日常は、確かに続いている。

だが、そのすべてが、どこか遠くに感じられた。

「……まだ、見つかっていません」

中継の声が、少しだけ緊張を帯びる。

誰もが、画面を見ていた。

何も映っていない画面を。

それでも、目を離さなかった。

残り、三十秒。

「……どこや」

誰かが、呟く。

その問いは、世界中で共有されていた。

残り、十秒。

空気が、張り詰める。

誰も動かない。

誰も、声を出さない。

ただ、時間だけが減っていく。

――五。

――四。

――三。

――二。

――一。

静寂。

そして。

「……終了です」

その一言で、すべてが決まった。

見つからなかった。

それだけだった。

歓声は、起きなかった。

拍手も、なかった。

ただ、誰かが小さく言った。

「……勝ちか」

その言葉が、やけに軽く感じられた。

やがて。

カメラが、ある場所を映す。

地下鉄のホーム。

人混みの中。

一人の人物が、立っていた。

誰とも目を合わせず。

ただ、そこにいる。

「……おった」

誰かが、また呟く。

その声には、驚きも、笑いもなかった。

ただ、少しだけ。

納得のようなものがあった。

勝者は、何も語らなかった。

何もせず、ただ一礼する。

その動きは、これまでと同じだった。

静かで、控えめで、そして正確だった。

その日、世界はまた一つ学んだ。

何も起きないことが、
一番難しい場合もあるのだと。

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