時間は、容赦なく進んでいた。
残り、一分。
都市は、相変わらず静かだった。
人々は動いている。
音もある。
日常は、確かに続いている。
だが、そのすべてが、どこか遠くに感じられた。
「……まだ、見つかっていません」
中継の声が、少しだけ緊張を帯びる。
誰もが、画面を見ていた。
何も映っていない画面を。
それでも、目を離さなかった。
残り、三十秒。
「……どこや」
誰かが、呟く。
その問いは、世界中で共有されていた。
残り、十秒。
空気が、張り詰める。
誰も動かない。
誰も、声を出さない。
ただ、時間だけが減っていく。
――五。
――四。
――三。
――二。
――一。
静寂。
そして。
「……終了です」
その一言で、すべてが決まった。
見つからなかった。
それだけだった。
歓声は、起きなかった。
拍手も、なかった。
ただ、誰かが小さく言った。
「……勝ちか」
その言葉が、やけに軽く感じられた。
やがて。
カメラが、ある場所を映す。
地下鉄のホーム。
人混みの中。
一人の人物が、立っていた。
誰とも目を合わせず。
ただ、そこにいる。
「……おった」
誰かが、また呟く。
その声には、驚きも、笑いもなかった。
ただ、少しだけ。
納得のようなものがあった。
勝者は、何も語らなかった。
何もせず、ただ一礼する。
その動きは、これまでと同じだった。
静かで、控えめで、そして正確だった。
その日、世界はまた一つ学んだ。
何も起きないことが、
一番難しい場合もあるのだと。