問題は、戦利品だった。
かくれんぼの結果は、出た。
制限時間内に見つからなかった。
規定上は、勝利である。
だが、そこで会議は止まった。
「……何を渡すんや」
誰かが、正直に言った。
これまでの戦利品には、かろうじて形があった。
まわし。
ボール。
意味はわからなくても、物はあった。
だが、今回は違った。
見つからなかったことが、勝利である。
では、その勝利に対応する戦利品とは何か。
沈黙が落ちた。
「空気、ですか」
誰かが言った。
誰も笑わなかった。
「静けさ、という案もあります」
別の誰かが、資料を見ながら言う。
「見つからなかった時間、という考え方も」
言えば言うほど、わからなくなった。
それらは、間違ってはいない。
だが、正しいとも言えなかった。
やがて、一人が口を開いた。
「そもそも、勝者はどこにいるんですか」
その一言で、空気が変わった。
会議室の誰もが、同じことを考えていた。
だが、誰も言わなかったことだった。
勝者は、見つからなかった。
それは、競技上の勝利を意味している。
しかし、授与式には本人が必要である。
戦利品を受け取る者が、必要である。
「現在、所在確認中です」
係員が、静かに言った。
その言葉は、説明のようで、説明ではなかった。
確認中。
つまり、まだ決まっていない。
勝っている。
だが、受け取れない。
結果はある。
だが、形にできない。
会議は、そこで止まった。
結論は出なかった。
後日、公式記録にはこう記された。
『戦利品:保留』
その一行だけが、残った。
誰も修正しなかった。
修正するための事実が、まだ見つかっていなかったからだ。