無意味連作劇『首相決戦』第十九話 保留

問題は、戦利品だった。

かくれんぼの結果は、出た。

制限時間内に見つからなかった。

規定上は、勝利である。

だが、そこで会議は止まった。

「……何を渡すんや」

誰かが、正直に言った。

これまでの戦利品には、かろうじて形があった。

まわし。

ボール。

意味はわからなくても、物はあった。

だが、今回は違った。

見つからなかったことが、勝利である。

では、その勝利に対応する戦利品とは何か。

沈黙が落ちた。

「空気、ですか」

誰かが言った。

誰も笑わなかった。

「静けさ、という案もあります」

別の誰かが、資料を見ながら言う。

「見つからなかった時間、という考え方も」

言えば言うほど、わからなくなった。

それらは、間違ってはいない。

だが、正しいとも言えなかった。

やがて、一人が口を開いた。

「そもそも、勝者はどこにいるんですか」

その一言で、空気が変わった。

会議室の誰もが、同じことを考えていた。

だが、誰も言わなかったことだった。

勝者は、見つからなかった。

それは、競技上の勝利を意味している。

しかし、授与式には本人が必要である。

戦利品を受け取る者が、必要である。

「現在、所在確認中です」

係員が、静かに言った。

その言葉は、説明のようで、説明ではなかった。

確認中。

つまり、まだ決まっていない。

勝っている。

だが、受け取れない。

結果はある。

だが、形にできない。

会議は、そこで止まった。

結論は出なかった。

後日、公式記録にはこう記された。

『戦利品:保留』

その一行だけが、残った。

誰も修正しなかった。

修正するための事実が、まだ見つかっていなかったからだ。

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