無意味連作劇『首相決戦』最終話(第二十話) 勝者、行方不明

発表は、簡潔だった。

『勝者:確認中』

それだけが、全世界に共有された。

説明はなかった。

補足もなかった。

訂正の予定も、示されなかった。

ニュース番組は、その文言をそのまま読み上げた。

「本日の首相決戦は、勝者確認中という結果になりました」

声は落ち着いていた。

特別な調子は、どこにもなかった。

画面には、いつものテロップが流れる。

日付。時刻。為替。天気。

その並びの中に、違和感は紛れ込んだままだった。

街中のスクリーンでも、同じ表示が繰り返された。

人々は足を止める。

数秒見て、立ち去る。

「まだなんか」

「まだなんやろな」

会話は、それで終わる。

学校では、授業が続いていた。

黒板には、前回までの戦利品が並ぶ。

まわし。ボール。不可視。

教師は、チョークを置く。

そして、付け加える。

「今回は、保留です」

生徒は、ノートに書く。

保留。

それは、間違いではなかった。

どこにも確定がないだけで、

結果は確かに存在していたからだ。

博物館では、新しいケースが用意された。

中には、何も入っていない。

ラベルだけが先に置かれる。

『首相決戦 第四回戦利品(保留)』

来館者は、立ち止まる。

何もない空間を、しばらく見る。

やがて、次へ進む。

違和感は、言葉にならない。

だが、消えもしない。

そのまま、持ち帰られる。

政府は、定例会見を開いた。

質問は同じだった。

「首相は、どこに?」

回答も、ほぼ同じだった。

「現在、確認中です」

繰り返される。

何度でも。

繰り返されるうちに、

それは説明ではなく、状態を指す言葉になった。

確認中。

誰もが、その言葉を理解した。

そして、深く考えなくなった。

数日後。

次の競技の準備が始まった。

抽選日が告知される。

会場が整えられる。

人々は、また集まる。

誰もが、知っている。

前回の結果が、確定していないことを。

それでも。

次は、始まる。

「……まぁ、ええか」

誰かが、そう言った。

その言葉は、すぐに広がった。

訂正されることはなかった。

その日、世界は何も解決しなかった。

だからこそ、何も止まらなかった。

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