その恋は、近すぎた。
最初は、ちょうどよかった。
手の届く距離。
声がすぐ届く距離。
安心できる距離やった。
―――
「今、何してる?」
「どこおるん?」
「なんで返事遅いん?」
言葉は増えていった。
距離は、縮まっていった。
(間)
温度が、上がりすぎた。
―――
気づいたときには、
ガラスの内側に、水がついていた。
拭いても、また曇る。
拭いても、またつく。
それが、結露やった。
―――
「なんでわかってくれへんの?」
「ちゃんと言ってるやん」
言葉は届いているのに、
意味だけが、すり抜けていく。
(間)
触れすぎたんやと思う。
近づきすぎたんやと思う。
―――
吾朗は、窓際におった。
誰にも気づかれへんまま、
ただ、その水を見ていた。
「……冷えとるな。」
(小さく)
「でも、湿っとる。」
―――
二人は、まだ隣にいる。
でも、少しだけ、遠い。
ガラス一枚分だけ、遠い。
―――
吾朗は、指でなぞるように、
ゆっくりと吸い取った。
全部は、無理やった。
少しだけ、跡が残る。
―――
「まあええか。」
「ちょっとずつやな。」