吸井吾朗 公文書館勤務記録⑤『乾かへん謝罪』―言うだけでは、乾かんのや―

その謝罪は、何度も繰り返されていた。

「申し訳ありませんでした。」

「深く反省しております。」

言葉は、きれいに整っていた。

間違いもなかった。

(間)

でも、空気は変わらなかった。

―――

「今後このようなことがないように…」

「再発防止に努めます。」

(全員うなずく)

―――

何も、乾いてへんかった。

言葉だけが、表面をなぞっていく。

奥の方は、そのままやった。

(間)

むしろ、湿っていた。

―――

吾朗は、その場におった。

誰にも気づかれへん位置で、

ただ、その謝罪を見ていた。

「……よう言うな。」

(小さく)

「でも、吸えへんな。」

―――

謝っているのに、

軽くならない。

言っているのに、

届いていない。

(間)

それは、湿ったままやった。

―――

吾朗は、少しだけ近づいた。

言葉の奥。

声の裏。

そこに溜まったものを、

そっと吸う。

(間)

「……これやな。」

「言葉やなくて、こっちや。」

―――

空気が、少しだけ軽くなる。

でも、全部は変わらへん。

(間)

「まあええか。」

「次やな。」

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