無意味連作劇『首相決戦』第十七話 見つからない

都市が、静まり返っていた。

完全に、ではない。

車は走り、人は歩き、日常は続いている。

だが、その裏で。

世界は、探していた。

「まだ見つかっていません」

中継の声が、静かに流れる。

画面には、街の風景。

ただの交差点。
ただのビル。
ただの公園。

そのどこかに、首相がいる。

そう思うだけで、風景の意味が変わる。

「……おる?」

誰かが、小さく呟く。

だが、当然ながら、答えはない。

ルールは単純だった。

制限時間内に、見つければ勝ち。

見つからなければ、負け。

ただ、それだけ。

しかし。

その“それだけ”が、異様に難しかった。

「ヒントとか、ないんか」

「ありません」

「……えぐいな」

時間だけが、過ぎていく。

何も起きない。

ただ、探す。

ただ、待つ。

その繰り返し。

やがて。

一つの報告が入る。

「――発見情報あり」

空気が、一気に変わる。

映像が切り替わる。

カメラが、ゆっくりとズームする。

そこには――

「……おった」

ベンチに座っている人物がいた。

新聞を読んでいる。

あまりにも、自然だった。

誰も気づかなかったのが、不思議なほどに。

「……すご」

誰かが、ぽつりと呟く。

その声には、わずかな敬意が含まれていた。

だが、その直後。

別の場所から、声が上がる。

「――まだや」

画面が、分割される。

もう一人が、まだ見つかっていなかった。

時間は、残りわずか。

都市は、静かに息を潜める。

世界は、ただ見ていた。

見つかるか、見つからないか。

その瞬間を。

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