無意味連作劇『首相決戦』第十三話 反対

最初に声を上げたのは、若い記者だった。

「これは、本当に正しいのでしょうか」

会見場が、わずかにざわつく。

その問いは、シンプルだった。

そして、ずっと避けられてきたものでもあった。

「誰も死なない。確かに、それは良いことです」

記者は、言葉を選びながら続ける。

「しかし、それだけで、すべてを肯定していいのでしょうか」

沈黙。

誰も、すぐには答えられなかった。

「勝敗を、娯楽のように扱っていないでしょうか」

「国家の意思決定が、競技の結果に委ねられていることに、違和感はありませんか」

その一言一言が、空気を少しずつ揺らす。

だが、それでも。

強く否定する声は、上がらなかった。

「……では、どうすればよいと?」

別の記者が、静かに問い返す。

若い記者は、少しだけ考えた。

そして、答えた。

「わかりません」

その答えに、場が止まる。

「ただ、違和感がある、ということだけは確かです」

その言葉は、どこまでも正直だった。

会見は、そのまま終了した。

明確な答えは、出なかった。

しかし、その日を境に。

ほんの少しだけ、空気が変わった。

誰もが心のどこかで、思い始めていた。

――これで、本当にええんか。

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