時間は、人を変える。
子どもたちは大きくなった。
服装が変わり、言葉づかいが変わり、夢の語り方まで変わっていった。
鬼だけが、変わらなかった。
相変わらず大げさに笑い、相変わらず人の輝きを見つけては喜んでいた。
だが、成長した子どもたちは、昔のようには笑わなくなっていた。
「僕はね、将来は弁護士になろうと思ってるんだ」
そう気取った標準語で語る声に、鬼は目をむいた。
「はぁ!? お前、砂場で泥団子売ってケーキ屋さんやる言うとったやろが!」
また別の子が言う。
「私は市役所で働く。地域に貢献したいの」
鬼はたまらず叫ぶ。
「お前は地域ちゃう! ワシやろ! ワシ助ける言うてたやろ!」
誰かが「安定した企業に就職する」と言えば、
鬼は「キャッチボールで泣いて帰ってきたやろ!」と本気で嘆いた。
子どもたちは笑った。
笑いながらも、少しずつ鬼との距離を測っていた。
鬼の言葉は、まだ聞こえていた。
けれどもう、昔みたいには響いていなかった。
そんな中でも、あのまじめな少年だけは、変わらないように見えた。
彼はずっと、先生になりたいと言っていた。
観客がいるなら、誰もが「この子だけはブレない」と思っただろう。
だが記録は、そこでねじれる。
大学生になったその少年は、静かな声でこう言ったという。
「……やっぱり先生はやめた」
鬼は、ぴたりと止まった。
そして次の言葉を待った。
少年は、真顔のまま続けた。
「インフルエンサーになる」
記録には、その瞬間のことがこう残されている。
――暗転。
――鬼の絶叫のみが響く。
――「えええええーーーーー!?」
これは明らかに喜劇的な場面として記録されている。
しかし同時に、笑って済ませるにはあまりにも今風で、あまりにも切実だった。
教師という堅実な夢を語っていた少年ですら、
分析の果てにそこへたどり着いたのである。
残念なのか、現実的なのか、挑戦なのか。
それは記録者にも判断がつかなかったらしい。
ただ一つ確かなのは、その場にいた鬼が、心の底から驚いたということだけである。