【無意味連作劇】鬼が見えた日 第三記録 夢の変化と鬼の嘆き

時間は、人を変える。

子どもたちは大きくなった。
服装が変わり、言葉づかいが変わり、夢の語り方まで変わっていった。

鬼だけが、変わらなかった。

相変わらず大げさに笑い、相変わらず人の輝きを見つけては喜んでいた。
だが、成長した子どもたちは、昔のようには笑わなくなっていた。

「僕はね、将来は弁護士になろうと思ってるんだ」

そう気取った標準語で語る声に、鬼は目をむいた。

「はぁ!? お前、砂場で泥団子売ってケーキ屋さんやる言うとったやろが!」

また別の子が言う。

「私は市役所で働く。地域に貢献したいの」

鬼はたまらず叫ぶ。

「お前は地域ちゃう! ワシやろ! ワシ助ける言うてたやろ!」

誰かが「安定した企業に就職する」と言えば、
鬼は「キャッチボールで泣いて帰ってきたやろ!」と本気で嘆いた。

子どもたちは笑った。
笑いながらも、少しずつ鬼との距離を測っていた。

鬼の言葉は、まだ聞こえていた。
けれどもう、昔みたいには響いていなかった。

そんな中でも、あのまじめな少年だけは、変わらないように見えた。

彼はずっと、先生になりたいと言っていた。
観客がいるなら、誰もが「この子だけはブレない」と思っただろう。

だが記録は、そこでねじれる。

大学生になったその少年は、静かな声でこう言ったという。

「……やっぱり先生はやめた」

鬼は、ぴたりと止まった。

そして次の言葉を待った。

少年は、真顔のまま続けた。

「インフルエンサーになる」

記録には、その瞬間のことがこう残されている。

――暗転。
――鬼の絶叫のみが響く。
――「えええええーーーーー!?」

これは明らかに喜劇的な場面として記録されている。
しかし同時に、笑って済ませるにはあまりにも今風で、あまりにも切実だった。

教師という堅実な夢を語っていた少年ですら、
分析の果てにそこへたどり着いたのである。

残念なのか、現実的なのか、挑戦なのか。
それは記録者にも判断がつかなかったらしい。

ただ一つ確かなのは、その場にいた鬼が、心の底から驚いたということだけである。

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