会議は、長引いていた。
原因は、たった一つである。
「次の競技を決めなければならない」
それだけの話だった。
しかし、その“それだけ”が、異様に難しかった。
「剣道でいいのでは?」
誰かが言う。
「いや、偏りすぎている」
別の誰かが、すぐに返す。
「公平性を考えるなら、柔道の方が適している」
その一言で、空気が変わった。
「またそれか」
小さなため息が、いくつも重なる。
「柔道はいい競技だ。しかし、組み合いは危険性が高い」
「竹刀で頭を叩くのが安全だとでも?」
静かに、だが確実に火花が散る。
議題は変わらない。
だが、温度だけが上がっていく。
「では、他の案はあるのか」
沈黙。
しばらくして、一人が口を開いた。
「……相撲」
場が止まった。
「いや、それは」
「まわし問題が再燃する」
誰かが小さく言った。
「文化的には魅力的だが、体格差が大きすぎる」
「それを言うなら、すべての競技に差はある」
議論は、円を描くように回り続けた。
結論は出ない。
ただ、全員がうっすらと気づいていた。
――これもまた、戦争なのだと。
声を荒げない戦争。
ルールの中で、立場を主張し合う戦争。
やがて、議長が口を開いた。
「……では、こうしよう」
全員が顔を上げる。
「次回は、種目をランダムに決定する」
一瞬の静寂。
そして、誰もが思った。
――それが一番、揉めないかもしれない。