無意味連作劇『首相決戦』第四話 種目をめぐる静かな戦争

会議は、長引いていた。

原因は、たった一つである。

「次の競技を決めなければならない」

それだけの話だった。

しかし、その“それだけ”が、異様に難しかった。

「剣道でいいのでは?」

誰かが言う。

「いや、偏りすぎている」

別の誰かが、すぐに返す。

「公平性を考えるなら、柔道の方が適している」

その一言で、空気が変わった。

「またそれか」

小さなため息が、いくつも重なる。

「柔道はいい競技だ。しかし、組み合いは危険性が高い」

「竹刀で頭を叩くのが安全だとでも?」

静かに、だが確実に火花が散る。

議題は変わらない。

だが、温度だけが上がっていく。

「では、他の案はあるのか」

沈黙。

しばらくして、一人が口を開いた。

「……相撲」

場が止まった。

「いや、それは」

「まわし問題が再燃する」

誰かが小さく言った。

「文化的には魅力的だが、体格差が大きすぎる」

「それを言うなら、すべての競技に差はある」

議論は、円を描くように回り続けた。

結論は出ない。

ただ、全員がうっすらと気づいていた。

――これもまた、戦争なのだと。

声を荒げない戦争。

ルールの中で、立場を主張し合う戦争。

やがて、議長が口を開いた。

「……では、こうしよう」

全員が顔を上げる。

「次回は、種目をランダムに決定する」

一瞬の静寂。

そして、誰もが思った。

――それが一番、揉めないかもしれない。

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