無意味連作劇『首相決戦』第三話 戦利品

敗北は、静かに運ばれてきた。

木箱だった。

やたらと立派な、桐の箱。

「……これが?」

ある国の首相が、戸惑いながら尋ねた。

係員は、淡々と答える。

「はい。今回の戦利品となります」

「戦利品て……」

その言葉は、どこか浮いていた。

箱の蓋が、ゆっくりと開けられる。

中には、丁寧に包まれた布。

さらにその中から現れたのは――

「……まわし?」

空気が止まった。

「相撲の、です」

係員は誇らしげに言った。

誰も、すぐには反応できなかった。

「いや……これを、どうしろと?」

首相は、慎重に言葉を選んだ。

「文化的価値の高い品と聞いております」

「いや、それはそうやろうけど」

その場にいた全員が、同じことを思っていた。

――いる?これ。

だが、誰も口には出さなかった。

それが、礼儀だと思ったからだ。

「……ありがたく、頂戴する」

首相は、ぎこちなく頷いた。

その様子は、どこか滑稽で、そして妙に真剣だった。

後日。

そのまわしは、国立博物館に展示された。

説明文には、こう書かれている。

『首相決戦 第一回大会 戦利品』

来館者は、足を止める。

しばらく見つめる。

そして、だいたい同じ感想を持つ。

――ほんまに、これでええんか。

しかし、誰も否定しなかった。

なぜなら。

それでも、誰も死ななかったからだ。

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