無意味連作劇『首相決戦』第十二話 慣れ

それは、ゆっくりと始まった。

気づいたときには、もう当たり前になりかけていた。

「次の首相決戦、いつやったっけ?」

そんな会話が、日常に混ざる。

ニュース番組では、専門コーナーが設けられた。

「本日の注目ポイントです」

キャスターが、落ち着いた声で解説する。

「外野からの圧力に対し、どのように対処するかが鍵となります」

誰も、ツッコまない。

むしろ、真剣に聞いている。

街中の大型スクリーンでは、過去の試合が流れていた。

人々が足を止める。

「この試合、えぐかったよな」

「あのとき、はしゃぎかけたやつやろ」

笑いが、自然に生まれる。

誰も、怖がっていない。

学校では、授業の一環として取り上げられた。

「では、このルールの意義について考えてみましょう」

生徒たちが、ノートを開く。

「はしゃいだら負けって、なんで必要なん?」

「負けた側の気持ちを守るためやと思う」

そんなやり取りが、静かに交わされる。

その光景は、どこまでも平和だった。

そして、どこか不思議だった。

かつて、同じ“勝ち負け”のために、
多くのものが壊されていたとは、思えないほどに。

「……慣れてきたな」

誰かが、ぽつりと呟いた。

その言葉に、誰も反論しなかった。

それが、事実だったからだ。

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