無意味連作劇『首相決戦』第十五話 追加条項

ルールは、増えていた。

最初は、たった数行だった。

戦うのは首相のみ。
武器は禁止。
勝っても、はしゃいだら負け。

それだけだった。

だが今。

その文書は、分厚くなっていた。

「……増えすぎやろ」

誰かが、ページをめくりながら呟く。

条項は、細かく、具体的になっていた。

第十二条 試合後の表情管理について
第十八条 控室における発言の扱い
第二十三条 “はしゃぎ未遂”の定義

「未遂の定義いる?」

「前回あったからな」

淡々とした会話が交わされる。

さらに、新しい項目が追加されていた。

第三十条 競技中の過度な挑発行為の禁止

「これは……必要やな」

誰もが、少しだけ納得した。

その横で、別の条項が目に入る。

第三十一条 勝利後の“ガッツポーズ”の可否については、現在協議中とする

沈黙。

「……そこ、まだ決まってへんのか」

小さな笑いが、漏れる。

だが、その笑いはすぐに消えた。

なぜなら。

誰もが、知っていたからだ。

このルールは、増え続けるのだと。

一つのズレを直すたびに、
新しいズレが生まれる。

それを埋めるために、またルールが増える。

終わりは、見えなかった。

「……まあ、ええか」

誰かが、静かに言った。

その言葉に、誰も反論しなかった。

なぜなら。

それでも、誰も死ななかったからだ。

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