疲れ詩『傘が閉まらへん』

今日の任務は完了した。
やるべきことは済ませた。
雨も上がった。
あとは帰るだけやった。

それやのに──
傘が閉まらへん。

ワンタッチのはずのボタンが
ピクリともせえへん。
力入れても無反応。
帰るだけのはずの時間で、
またちょっとだけ、心が折れる。

「もう…ええやん…閉まってくれや……」
声には出してへんけど、
傘に言ってた。

カチッて音が鳴るはずのところで、
無音。
ボタン押しても無反応。
手応えゼロ。

何回やっても、閉まらん。
駅の階段のとこで、
わたしだけ、傘と格闘してた。

「なんで…」
「さっきまで普通やったやん」
「わたし何かした…?」

そうやって呟きながら、
傘と自分が、どっちも壊れてるような気がした。

まわりの人はサッと閉じてる。
それが余計に悲しかった。

他人から見たら、ただの道具やのに。
いまのわたしには、
「うまくいかへん人生の象徴」みたいに見えた。

最後、無理やりバチン!て音立てて閉じた。
ちょっとだけスッとしたけど、
なんか自分に負けた気もした。

傘、壊れてへんとええな。
わたしも。

(了)

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