反対の声は、確かに広がった。
小さく、しかし確実に。
議論は、各国で起こった。
「この制度は、本当に正しいのか」
「国家の意思を、競技で決めてよいのか」
テレビでも、街角でも、同じ問いが繰り返された。
だが。
結論は、出なかった。
なぜなら。
それをやめたあとの世界を、誰も想像できなかったからだ。
かつてのように、武器を取るのか。
かつてのように、多くを失うのか。
その記憶が、どこかに残っていた。
「……それなら、このままでええんちゃうか」
誰かが言う。
それは、積極的な賛成ではなかった。
ただの、消極的な選択だった。
だが、その声は、多くの人にとって、理解できるものだった。
結局。
制度は、維持された。
次の首相決戦も、予定通り開催されることになった。
会場の準備が進む。
中継の手配が整う。
観客席が、ゆっくりと埋まっていく。
誰もが、どこかで引っかかりを感じながら。
それでも、足を運ぶ。
「……結局、見るんやな」
誰かが、苦笑した。
否定する声は、なかった。
その日、世界はまた一つ学んだ。
正しさだけでは、人は動かないのだと。