都市が、静まり返っていた。
完全に、ではない。
車は走り、人は歩き、日常は続いている。
だが、その裏で。
世界は、探していた。
「まだ見つかっていません」
中継の声が、静かに流れる。
画面には、街の風景。
ただの交差点。
ただのビル。
ただの公園。
そのどこかに、首相がいる。
そう思うだけで、風景の意味が変わる。
「……おる?」
誰かが、小さく呟く。
だが、当然ながら、答えはない。
ルールは単純だった。
制限時間内に、見つければ勝ち。
見つからなければ、負け。
ただ、それだけ。
しかし。
その“それだけ”が、異様に難しかった。
「ヒントとか、ないんか」
「ありません」
「……えぐいな」
時間だけが、過ぎていく。
何も起きない。
ただ、探す。
ただ、待つ。
その繰り返し。
やがて。
一つの報告が入る。
「――発見情報あり」
空気が、一気に変わる。
映像が切り替わる。
カメラが、ゆっくりとズームする。
そこには――
「……おった」
ベンチに座っている人物がいた。
新聞を読んでいる。
あまりにも、自然だった。
誰も気づかなかったのが、不思議なほどに。
「……すご」
誰かが、ぽつりと呟く。
その声には、わずかな敬意が含まれていた。
だが、その直後。
別の場所から、声が上がる。
「――まだや」
画面が、分割される。
もう一人が、まだ見つかっていなかった。
時間は、残りわずか。
都市は、静かに息を潜める。
世界は、ただ見ていた。
見つかるか、見つからないか。
その瞬間を。