あれ……
なんで今、電車止まったんやろ。
というか、
そもそも──
ここ、どこの駅?
扉が開いて、
人が乗り降りして、
アナウンスが流れてるのに
何ひとつ頭に入ってこん。
駅名表示がぼやけてるんじゃなくて、
わたしの意識が、
ずるっと滑って、
どこかへ落ちたまま戻ってこーへんのや。
降りるつもりの駅やったっけ?
乗り換え?まだ?
もうちょい先?
……うん、もうちょい乗ろ。
(ほんまは、さっき降りなあかんかった駅やった)
でも、
身体がもう言うこと聞かへんねん。
「次で降りよう」って、
さっきから5駅ぶん思ってる。
つかの間の座席。
音のない疲れ。
アナウンスは言う。「ドア閉まります」
──わたしの心も、今ちょうど閉まった。
どこへ向かってるんかも、
もうどうでもええ時あるねん。
ただ、座ってたいだけやねん。
目的地なんか、今は後回しでええねん。
“知らん駅”のほうが
いまの自分には優しかったりする。
ここ、どこの駅?
って問いながら、
今日もわたしは、
“自分”に乗り過ごしていく。
(了)